テアトル虹 第2回「ヘアスプレー」


ヘアスプレー

DVD&Blu-ray発売中
DVD:1,980円/Blu-ray:2,750円(税込)発売元:アスミック・エース
販売元:KADOKAWA

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【STAFF】監督/アダム・シャンクマン
【CAST】ジョン・トラボルタ、ミシェル・ファイファー、クリストファー・ウォーケン、クイーン・ラティファ、ザック・エフロン、ニッキー・ブロンスキーほか

2002年、カルト映画の代名詞『ピンクフラミンゴ』のジョン・ウォーターズ監督の映画『ヘアスプレー』(1988年)がブロードウェイでミュージカル化されると聞いた時は正直驚いた。

ディバインという稀代のドラァグクイーン(その容姿はディズニーアニメ「リトルマーメイド 」の悪役アースラのモデルになったほど)が主人公の母親役!を演じたカルト作品がまさかの舞台化とは!

話は1950年代のボルチモアを舞台に、地元で若者たちに人気のテレビ番組『コーニー・コリンズショー』のレギュラーになったトレイシーが、先輩出演者などのイケずにも負けず持ち前の明るさで周りを魅了し、やがて様々な差別を感じ取りやがて闘っていくというもの。

ディバインが演じた母親エドナ役を初演で演じるのはハーヴェイ・ファイアスタインだと言う。

自身のゲイ人生を描いたストレートプレイ『トーチソング・トリロジー』で脚本と主演(後に映画化)を務め、その後も『ラ・カージュ・オ・フォール』『キンキー・ブーツ』『ニュージーズ』と言ったミュージカルの脚本も手がける才人。これはいても立ってもいられず、この目で確かめたいとブロードウェイまで見に行った。

まず「Good morning Baltimore」から始まるさまざまな曲の、キャッチーさとポップさに心奪われ、ちょっと太目だけど常に前向きで優しい主人公トレイシーのキュートさ、そして巨漢を揺らしながらしゃがれ声で歌い踊るハーヴェイ・ファイアスタインの母親役の存在感。そしてまだ「glee」に主演する前のマシュー・モリソンがヒロイン憧れのダンサー、リンクを演じている貴重さ、さらにクセのあるキャラクターたち、映画からリスペクトした適度な下品感の塩梅が素晴らしく、当然だけどミュージカルとしてもみごと昇華されていて、ニューヨーク滞在中は2回足を運んで至福の時間を過ごさせてもらった。

その後、その舞台が再び映画化されると聞き、さらにエドナ役には、まさかのジョン・トラボルタが演じると知った時にはまたまたびっくり。

出来上がった作品は、最初でこそ、トラボルタの極端すぎる特殊メーキャップに引いたものの、舞台の楽しさ、メッセージ(カットされてる部分もあるけど)がしっかり映像となり、がっつりミュージカル映画としても成立していた。

渡辺直美が東京オリンピック開会式で豚に扮してワイワイするという、時代遅れなアイディアを出してたクリエイターオヤジがいたけれど、今作ではすでに主人公、トレイシーと母親エドナは“太めですけど何か?はぁ?”という意思をしっかり持っているし、ボルティモアに根付いていた黒人差別問題が軸となって、それぞれの活動がやがて時代も味方につけて変わったいくさまは、エドナ役が男性が演じているというのもマイノリティへの目が向けられていて(映画はトラボルタではなく本当はゲイの役者が演じて欲しかったけれど)、笑いながらも胸にジワジワくる。

他にもミシェル・ファイファーやクリストファー・ウォーケン、ザック・エフロン、クイーン・ラティファなど豪華キャストのアンサンブルは見もので特にクライマックスの「You can’t stop the beat」は、アガりまくる!

仲谷暢之
大阪生まれ。吉本興業から発行していた「マンスリーよしもと」の編集・ライティングを経て、ライター、編集者、イベント作家として関西を中心に活動。


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